2016年7月25日


図書館市民ニュース  第2号  2016年7月発行

図書館ビジョン 若い世代も参加して作成を
図書館友の会全国連絡会代表と懇談

「図書館と市民を結ぶ海老名の会」は5月27日、図書館友の会全国連絡会の福富洋一郎代表を招き、懇談会を開きました。
福富氏は、公共図書館の発展を求めて活動する同連絡会に全国の81団体が参加していることや、自身も居住地で図書館のボランティア活動を行っていることなどを紹介。子どもを育てるうえで貴重な役割を担う図書館の教育的文化的な役割などを強調しました。 

図書館の望ましいあり方
氏は、海老名市立中央図書館(海老名「ツタヤ図書館」)についても言及。中央図書館長が蔵書分類の基本的な質問に、「企業情報に関わる」ので「回答を差し控える」と述べたことを明らかにしました。
コーヒーを飲みながら本を閲覧できる図書館が全国には「ツタヤ図書館」以外にも数多くあること、「本が好き」という若い人も参加する横浜の図書館運動の経験、図書館の望ましいあり方を示す自治体の「中長期計画」を若い世代も参加してつくる意義などについても指摘しました。

力強さを感じた懇談会 
参加者からは、「図書館問題に熱く 取り組む人が全国に大勢いることが分かった」(女性)、「市民の一人として甘い姿勢を考えさせられる時間になった」(女性)、「訴訟までやっている人がいて、力強さを感じた」(男性)などの感想が寄せられました。

安全脅かす山岳本の開架 改めよ
本会が海老名市長に要望  

 図書館と市民を結ぶ海老名の会は6月21日、海老名市立中央図書館の山岳本問題について、要望書を内野優市長に提出しました。

使われれていない電話番号も
 中央図書館には登山者の安全を脅かしかねない山岳本が幾冊も開架書架に置かれています。
  なかでも「日本の名峰」シリーズ(山と渓谷社)の各巻は、各地の山々の 登山コース、所要時間、交通、山小屋の電話番号などを詳しく紹介。いずれも30年前の情報です。その一つ、『中央アルプス・御岳』も同様の情報を掲載していますが、御岳は二年前に噴火。死者数が58人と、戦後の噴火災害で最悪になりました。    
  古い山岳ガイド本には、台風や雪崩による崖崩れで、なくなった登山ルートや山小屋が記載された巻、現在使用されていない山小屋の電話番号を紹介した巻、山小屋の収容人員を現在は30人であるのに、「収容人員100人」と記した巻もあります。

蔵書の更新を
  要望書は2015年の山岳遭難が2058件と、1961年以降では最多となっていることを指摘。「現状とは違う山岳本を利用者の見える開架書架に置くことは、その安全や命を脅かす危険さえ招きかねない」と告発しています。
  海老名市立図書館の「除籍基準」が「出版年が古く情報源として適さなくなったもの」は「除籍により蔵書の更新」を図ると明記していることにも言及し、古い情報を載せる山岳本の開架図書扱いを直ちに改め、除架等の手続きをとることを強く求めています。

教育・文化の薫り高い 佐賀・伊万里市民図書館     
  井田憲治

伊万里市民図書館佐賀県伊万里市に設置されている公共図書館です。図書館の建設や運用について、市民と行政が一緒に考え実行していることや、図書館ボランティアを全国に先駆けて進めるなど、様々な先進的活動で知られています。
訪ねた2016年5月10日、そぼ降る雨の中を歩いて市立図書館に到着しました。傘を置き、入ったところは子どもフロアでした。ドアのすぐ右側にちょっと低めのカウンタ|があり、目線の下の方に書架が並んでいて、その広いスペ|スにあっと驚かされました。海老名市立図書館の四階にあるキッズフロアとの大きな差異を感じました。入口の子どもカウンタ|受付の人に係長を紹介され、約一時間の案内を受け、館内の見学をしました。以下その一部を紹介します。

家読(うちどく) 2007(平成19)年開始
親子(家族)で読んで、感じたことを話し合う新しい読書スタイルを提起し、全国的に話題を呼びました。いじめ根絶(全国初「いじめなし宣言」)、前年の「食のまちづくり宣言」では、「テレビ消し・早寝・早起き・朝ごはん」は流行語になり、家庭の教育力の向上につながるとの感想も届いているそうです。

赤ちゃんのブックスタート事業
3カ月児童検診時に絵本が贈られます。(昨年度、年間550人に絵本が2冊ずつ贈呈)

ぶっくんの巡回
平成3年にスタート、現在71か所(幼稚園・保育園、小・中学校など)をおはなしキャラバンが巡ります。

わくわくする登り窯シアター
   012歳児対象の読書会が毎週行われ、若いママたちと乳幼児を大切に育てる地域の温かさがあります。読み聞かせ、紙芝居など趣向を凝らした舞台装置(登り窯シアター)は、文化の豊かさを感じます。

「図書館フレンズいまり」
会員395人(5・10現在)。『協力と提言』を合言葉に図書館が市民のために守り育てるための支援活動団体です。毎月の催しのほか、後援会の企画・実施広報・PR活動さらにボランティ活動の支援など多彩なイベント(お話しキャラバン、てんとう虫の家、対面朗読草ひばり、いすの木合唱団)を行っています。まさに市民参加の市民のための図書館を育んでいます。

郷土の歴史を大切に
森永製菓の創始者「森永太一郎展示コーナー」、「大隈重信の肉声が聞けるコーナー」もあります。

地域間格差を失くすため
国立国会図書館の歴史的音源の提供やデジタル化資料送信サービスも利用できます。

お年寄り向けに
大活字本が充実しています。「本の価格が高価なので予算面でたいへんですが」と係長の弁でした。

編集後記
 海老名市立中央図書館の一階、雑誌架台の上段の書棚に、1964~1994年発行の古い雑誌「太陽」が大量に並び、1980年代の「山と渓谷」、同じ棚に「週刊文春」「サンデー毎日」が無造作に並べてありました。雑誌が棚の「埋め草」にされているのではないでしょうか。公共図書館です。もっと本を大切に扱い、市民本位の配架を考えてほしいと願わずにいられません。(j)