教育・文化の薫り高い 佐賀・伊万里市民図書館
井田憲治
伊万里市民図書館は佐賀県伊万里市に設置されている公共図書館です。図書館の建設や運用について、市民と行政が一緒に考え実行していることや、図書館ボランティアを全国に先駆けて進めるなど、様々な先進的活動で知られています。
訪ねた2016年5月10日、そぼ降る雨の中を歩いて市立図書館に到着しました。傘を置き、入ったところは子どもフロアでした。ドアのすぐ右側にちょっと低めのカウンタ|があり、目線の下の方に書架が並んでいて、その広いスペ|スにあっと驚かされました。海老名市立図書館の四階にあるキッズフロアとの大きな差異を感じました。入口の子どもカウンタ|受付の人に係長を紹介され、約一時間の案内を受け、館内の見学をしました。以下その一部を紹介します。
家読(うちどく) 2007(平成19)年開始
親子(家族)で読んで、感じたことを話し合う新しい読書スタイルを提起し、全国的に話題を呼びました。いじめ根絶(全国初「いじめなし宣言」)、前年の「食のまちづくり宣言」では、「テレビ消し・早寝・早起き・朝ごはん」は流行語になり、家庭の教育力の向上につながるとの感想も届いているそうです。
赤ちゃんのブックスタート事業
3カ月児童検診時に絵本が贈られます。(昨年度、年間550人に絵本が2冊ずつ贈呈)
ぶっくんの巡回
平成3年にスタート、現在71か所(幼稚園・保育園、小・中学校など)をおはなしキャラバンが巡ります。
わくわくする登り窯シアター
0、1、2歳児対象の読書会が毎週行われ、若いママたちと乳幼児を大切に育てる地域の温かさがあります。読み聞かせ、紙芝居など趣向を凝らした舞台装置(登り窯シアター)は、文化の豊かさを感じます。
「図書館フレンズいまり」
会員395人(5・10現在)。『協力と提言』を合言葉に図書館が市民のために守り育てるための支援活動団体です。毎月の催しのほか、後援会の企画・実施広報・PR活動さらにボランティア活動の支援など多彩なイベント(お話しキャラバン、てんとう虫の家、対面朗読草ひばり、いすの木合唱団)を行っています。まさに市民参加の市民のための図書館を育んでいます。
郷土の歴史を大切に
森永製菓の創始者「森永太一郎展示コーナー」、「大隈重信の肉声が聞けるコーナー」もあります。
地域間格差を失くすため
国立国会図書館の歴史的音源の提供やデジタル化資料送信サービスも利用できます。
お年寄り向けに
大活字本が充実しています。「本の価格が高価なので予算面でたいへんですが」と係長の弁でした。
編集後記
海老名市立中央図書館の一階、雑誌架台の上段の書棚に、1964~1994年発行の古い雑誌「太陽」が大量に並び、1980年代の「山と渓谷」、同じ棚に「週刊文春」「サンデー毎日」が無造作に並べてありました。雑誌が棚の「埋め草」にされているのではないでしょうか。公共図書館です。もっと本を大切に扱い、市民本位の配架を考えてほしいと願わずにいられません。(j)