2016年9月27日

図書館市民ニュース  第3号  2016年9月発行

中央図書館の視察でわかったこと

安全で、利用しやすい図書館を 


 当会はこのほど、海老名市立中央図書館を視察しました。「安全性」や「利用しやすさ」などに照らして、改善を必要とする諸点が浮き彫りになりました。

避難訓練は利用者の多い時間帯に
 避難訓練について市は、「3月に実施した」と説明していますが、今回の視察で、
訓練は平日の開館直後であったため、4階キッズコーナーの訓練参加者は親子3組
にとどまっていたことが判明しました。首都直下地震の発生が危惧されるなか、4
階はベビーカーの使用者も利用しています。避難訓練は利用者の多い日曜日の時間
帯などに実施されるべきです。
キッズルームは一階へ
 キッズルームには高さ約2・2㍍という書架もあります。子どもの手は全く届き
ません。「スタッフに声をかけて」と説明されていますが、スタッフは本の販売で忙
しくしていました。
 海老名は若い世代の家庭も多いまちです。キッズルームを1階に移すことや、乳
幼児・児童向けの図書館分館を市内に設置することなども検討されるべきでしょう。
雑誌・新聞コーナーの拡充を
1階の新聞・雑誌コーナーでは、閲覧用テーブルは狭く、椅子の数も限られています。
新聞を広げて読む専用台もありません。
 雑誌の数は、旧中央図書館時の148冊から77冊へと大幅に減少しています。
 「蔦屋書店の雑誌を読むことができる」と説明されていますが、同書店ではバック
ナンバー(既刊の号)を利用することはできません。中央図書館の雑誌をより拡充
することが望まれます。
珍妙な配架――文学の区分の明瞭化を
 文学関係の図書は、小説は地下に、エッセイ、文芸評論は2階に、詩、俳句・短歌、文学全集は
地下と2階にまたがっており、探すのに階段の昇降が必要です。文学全集は散在し、高い段にある
ため手に取って見ることができません。「海外文学」の区分も混乱しています。例えば、「中国文学」のコーナーには「タイ現代詩選」や「トンイ」()が並んでいます。「ガリヴァー旅行記」(英)や「アメリカエッセイ傑作選」(米)は「その他の海外文学」に。
立図書館ではおよそ見られない光景ではないでしょうか。
持参の弁当類も館内で食べられるように
 中央図書館の館内での食事のルールは、カフェ「スターバック
ス」のパン類はOK、市民持参のパン類はNOと、“二重基準”です。
持参の食事は「テラス席で」と説明されていますが、屋根のついた
テラスは限られ、風雨を防ぐ仕切りも皆無です。
 旧中央図書館では持参したパンや弁当を入口内で食べることがで
きました。中央図書館は市立をうたう以上、市民のものであるはず
です。持参の食事も館内で食べられる措置が求められています。

2016年9月26日

レベル向上目指す座間図書館
                                  松宮 光興

座間市立図書館を見学しました。運営を業者に依存していない、市の直営図書館です。入口には図書館の催し物などのお知らせとともに、市からのお知らせなども掲示してありました。

新聞の閲覧台が4つも
受付カウンターの手前にある階段を上ると、講座室・会議室・研修読書室などになっています。読書室には二人ずつの机が4列×8列に並んでいるので、一度に64人が利用できます。 
 受付の脇に、新聞・雑誌の閲覧コーナーがあって、新聞を2ページ分開いた状態で、2紙を置ける閲覧台が4つも並んでいたので驚きました。しかも一般の新聞だけでなく、神奈川県や座間市の広報の他に、海老名・綾瀬・厚木など近隣市の広報紙、タウンニュースやリベルタなども置いてありました。

ガラス窓で仕切られた「おはなし室」
 児童書コーナーは、書棚も子どもの身長に合わせて低くなっており、本の種類も「にほんのものがたり」などとひらがなの大きな文字で書いてあります。一角にガラス窓で仕切られた6畳間二つ分ぐらいの部屋があり、入口には「おはなし室」と書いてあります。読み聞かせや紙芝居などをやるようです。子どもたちも、お話しに集中できると感じました。
受付から先は一般の書棚が、2列ずつ11本、並んでいて、両サイドと中央の通路、さらに棚ごとの間隔は全て、約1.5メートルと広いので、書棚の前に人がいても、支障なく通行できます。 
 
 中央通路の棚には「小説」「エッセイ」「文学全集」などと分類が明示され、番号の大きな棚には政治・哲学などの専門性の高い本なので、読みたい本を探しやすくなっています。
 それでも見つからない場合のため、例えば動物学の棚に「ペットに関する本については3番の棚(分類645)もごらんください」などと書いてあるのです。職員の方が、利用者の立場になって、図書館のレベル向上に努力していることが感じられて感動しました。 


海老名市立中央図書館4Fをウォッチングする


図書館を使った調べる学習にふさわしいか
 海老名市は、今年度第1回「図書館を使った調べる学習コンクール」を始めた。調べる学習のテーマを決め、資料や実験など駆使して自分の見解をまとめて発表する自学自習のスタイル。
 さて、中央図書館が、児童・生徒にとって「図書館を使って調べる」というコンセプトにふさわしいかは、大いに疑問である。レファレンスは有効に働くのか。相談に乗ってくれるスタッフはいるのか。なじみの十進分類とは違うライフスタイルの配架では調べたい本が見つけにくい。
 そもそも子どもが一人で来る環境ではない。大人や学生たちが大勢座っている学習室を見ただけでもそういえる。
 他方、有馬図書館はこの夏、そのための講座を開くなどきめ細かい取り組みやサービスを行っている。

おはなし会は人気がありそうだが…
 中央図書館では毎週土曜日、午後2時~3時の予定でおはなし会が開催されている。場所は、円形の中央(靴を脱ぐ)。
 8月13日の3時頃行ってみた。外国人の職員が12、3人の幼児に、英語で折り紙の指導をしていた。保護者も同行している。周囲がざわざわしていて集中できない。おはなし会の場所は、他の読者と区別して、話ができる個室が相応しい。
 終了間際、スタバのコーヒーが幼児にもふるまわれていた。コーヒー飲料の幼児に与える影響や、「飲食ルール」に配慮を欠くサービスではないだろうか。

乳幼児の本・絵本が少ない
 おはなし会の場所の円形中央の枠を配して2段の本棚がある。そこには、乳幼児向け絵本があるのだが、本の量・質ともにみすぼらしい。読み聞かせも含め、座って読めるコーナーになっているのだが。絵本は買って読んでくださいということか。(I

編集後記
〇…初めて訪れた有馬図書館は、中央図書館とはまるで違う、落ち着きがあり、“水を得た魚の気分になりました
〇…十分な広さをもった児童書や絵本コーナー、目の高さに合わせた書架、ていねいな案内、掲示物などを見て、子どもたち一人ひとりを配慮し、本を通して子どもたちの成長に真摯に向き合っていこうとする図書館の姿勢を感じました
〇…入口近くには新着本が陳列され、海老名の歴史資料は見やすく展示されていました。従来の分類で配架された書棚では、とまどいなく本を探せます
〇…残念に感じたのは、蔦屋書店の商品情報をのせた海老名中央図書館の図書検索機が、有馬図書館でも使われていたことです。「本を借りる」か「本を買う」の選択画面を「借りる」モードで進めても、商品の価格、在庫の有無等の商品情報が出る検索機です。有馬図書館を利用する人にとってみれば、違和感をもつのではないでしょうか。(J